以前、日本の代表的なタマゴ製品のメーカーさんから、タマゴの殻の処分を依頼されたことがありました。当時の私(筆者)は、若くて何の知恵もありませんでした。肥料にするのには、手間がかかり経済効率が悪いなぁ、程度の話でした。
現在では、卵殻膜で化粧水が作られ、ヒアルロン酸液が作られ、医療用にもいろいろな開発が進められています。卵殻もカルシウムの補給剤、汚れ落とし剤、消臭剤、鮮度保持フィルム剤などに応用されています。
まさに「宝の山」です。「猫に小判」とは、私の事でした。
平成30年1月の科学技術振興機構報によりますと、「卵の白身から高強度ゲル材料の開発に成功」という記事が掲載されています。
卵白は加熱すると固まります。しかし、固まりは弱いものです。噛めば食べれます。
ところが、特定のイオン性界面活性剤を加えて、一定の圧力をかけ、一定の間隔で加熱することで「高強度のゲル材料」ができるのだそうです。
この成果は、手術などで蛋白質を素材とする医療用素材の開発につながります。体内に残留せず一定期間後に吸収されるからです。
鶏卵の卵白には100種類以上の蛋白質が含まれています。そのうち数種類の蛋白質がゲル化現象に関わっています。そこで、均一化した卵白蛋白質の分離、それを更にイオン性界面活性剤で分離、凝縮体を得る。これに一定の圧力をかけ、一定の間隔で加熱をつづけることで「高強化ゲル材料」が得られるとのことです。
要するに、蛋白質の種類が統一され、それが均一に変性して得られる物質の一つですね。変性した蛋白質同志のジスルフィド結合による共有結合のネットワークであり、疎水相互作用による非共有結合ネットワークの併存が図られているとのことです。
時代の変化は、様々な素材の利用の変化でもあります。
今迄、見捨てられていたものが突然に「宝の山」に変貌します。